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2008年4月29日 (火)

Wordに医用辞書を載せる男

Dicapplet  前回のこのブログから、ずいぶんと時間がたってしまいました。
2回目の「どーなのよ日本のメディカル」は、
医学用語の入力支援システムを作られている
アイティーコーディネート株式会社の栗原さんにお話を伺いました。

 アイティーコーディネートでは、ITコンサルタント、企業同士・病院と企業のコーディネート、アライアンス支援など、様々な事業を行っているようですが、
今回、栗原さんに伺った事業は、一言で言うと「Windows上での医療用語入力支援システム」です。

 WindowsにDicappletというシステムをインストールすると、
たとえばWordで「とうにょうびょう」と入力すれば
「標準病名=1型糖尿病」「索引用語=1型糖尿病、インスリン依存性糖尿病、インスリン依存糖尿病、若年型糖尿病、若年性糖尿病…」と、候補がいくつもテーブル表示されます。
 さらにレセプト(医療費を計算するための診療報酬明細書)の疾病名から適応するジェネリック医薬品の価格を調べたり、
ジェネリックから先発医薬品を探したりでき、病気に適応する薬剤データ、禁忌薬剤データも検索できるということです。

                             *         *

 アスキーがアスキーネットというパソコン通信の実験サービスなどを始めたのは85年の4月ころですが、
この時期というのは、日本電信電話公社がNTTになって、電話回線にモデムを接続できるようになり、個人でもパソコンのホスト局を作れるようになったりした年で、その後、
ニフティ(87年)などの大手商用パソコン通信の発展につながっていきました。

 私は81年に、ある製薬企業に入社し、内勤や営業を経験していましたが、
その製薬企業がある事件を起こし、それをきっかけにして創設された未来事業部という新規のビジネスを立ち上げる部門で、世間に対して役に立つ事業をやろうということになり、
私もそこで働くことになりました。
 そして85年に、その製薬企業の子会社として医療情報システムの会社がスタートし、本格的に「医療、データベース、ネットワーク」をキーワードとした仕事がメインワークとなりました。

 医療情報システムといえば、まず思い浮かぶのはレセプト関連ですが、
レセプトシステムは、すでに多くの企業が参入していたので、業界の他社がやっていないもので、なおかつ患者と医師のためになるシステムを作ろう、と考えました。
 当時はまだ電子カルテという言葉は無かったと記憶していますが、PCを使って、慢性疾患の患者さんに検査データを推移グラフや円グラフにして紙芝居的な指導をする、慢性疾患指導管理システムを作りました。電子カルテを、しかもビジュアルな形で先取りできたと思っています。
 慢性疾患の患者さんは、長い期間継続的に検査値を管理しなければならないのですが、数字の羅列を見ても素人である患者さんにはぱっと見た目わかりません。
 でもそれをグラフ化すれば、その変化が一目でわかります。医師も患者さんに説明しやすいですし、プリントアウトすることで、他の医療機関にかかることがあった場合にも参考となります。
 医療では「指導料」というものがありますが、テンプレート的に多数指導文を用意しておき、これを医師が患者さんの状態に合わせて内容を選択するという電子的な手法で、指導料を得ることができたのです。

 誰がこのシステムを考えたかというと、某大学病院の名物先生です。
どういうわけか製薬会社のときからこの先生に気に入られていて、
多くの学会や展示会に一緒に参加したりしていたのですが、
その先生が発想して作ったのが電子紙芝居だったわけです。

 当時、マルチ処理のできる漢字の第二水準を出せるのはソードしかなかったので、パソコンとしてはソードを使っていました。

(85年といえば、国内ではNECの88とか98とかが幅をきかせていましたが、小西眞廣さんの『アジア技術者流通革命』(スピークマン書店)にもあるように、ソードがアメリカで、ラップトップを多数、販売していたときでもあります)

 電子紙芝居では、製図用のソフトでイラストを作りました。
イラストは芸大の学生にアルバイトとして描いてもらいました。
疾患ごとに150種類くらい。
見る側の患者さんも、少ないパターンの絵だと飽きちゃいますから。
システムは、何百万円もしました。
ハードの仕入れだけで80万円しましたし、プリンタが20~30万円もしましたから。
これは、それなりに売れましたね。
このシステムを開発し、全国に売っていたわけです。

 でもその後、子会社の社長との意見が合わずに製薬企業の他事業部門に転勤となりましたが、「医療、データベース、ネットワーク」の三つをキーワードとした仕事を継続的にしたいという思いがありまして、転職しました。

 そこは電線大手(いまは光ファイバーを作っている会社)の子会社の医療情報システム専門の事業部で、当時、MUMPS(マンプス)というデータベースも作っていました。
 今は、Cache(キャシェ)という製品になっていますが、ツリー構造のデータベースです。
MUMPSは、アメリカのマサチューセッツ総合病院で開発された、
要するに人の病気データを管理することを目的に、専用に作られたデータベースシステムで、データを関数で表現して管理するものです。
 いまは主流派のMS―Accessやオラクルはリレーショナルデータベースですが、
キャシェはツリー構造のDBで、多くは医療分野で使われています。
転職後は、医用系コンテンツ製品の企画開発や医薬品マスター製作の業務を行い、ハイパーテキスト的な医薬品情報データベースを作りたいと考えていました。
 でも、その子会社も、海外の他社の電子カルテの仕組みを日本へ適応させようとして失敗し、重電大手の子会社と合併してしまいました。
 そのころ、ある大学に関係して「アイティーコーディネート」が設立され、大学病院のネットワーク構築や業務支援システムを企画開発する案件があって、そこが、先の電線大手の別の子会社と協業していたため、そこに一度出向し、そこからさらにアイティーコーディネートに出向、現在に至るわけです。

 アイティーコーディネートで扱っているのは、医用系のコンテンツ製品ですが、おもに医薬品データベースを多次元データベース的に管理し、それを2次元のテーブルにして表現します。人が見るときは、2次元として見た方が理解しやすいですから。

 このデータベースは、本来は、国や多くの関係者が製作し、一般に開放すべき医療の安心・安全にかかわるデータベースと考えてますが、誰もやらないので、アイティーコーディネートがやっています。巨大なデータベースですので、維持管理が大変です。経費もかかりますので、ワンソース・マルチユース・システムとして、多角的に製品化して商売にしようとしています。

 たとえば「医用辞書」。
パソコンに日本語を入力するときは、かな漢字変換システムを利用しますが、その辞書データには、医療で使用する専門用語は登録されてません。そのため、専門用語を入力するときには、単漢字変換したり、手書き認識のIMEパッドを使ったりと手間がかかります。そこで医療現場で使う専門の医療用語、医薬品名などを組み込んだ「医用辞書」をかな漢字変換用に開発し販売しています。現在は、マイクロソフト社のVista、Office2007と協業する形でプロモーションしています。
この「医用辞書」はソースデータの出典を明示して、安心してご利用いただけるようにしています。特に監修は、年間約4600誌もの医学論文をデータベース化し、
そのキーワードをシソーラス(類語辞典の一種)として提供している医学中央雑誌刊行会に依頼しています。

 この「医用辞書」はマイクロソフトのMS-IMEにあわせた形で作っており、医療情報システムベンダーに販売をお願いしています。
 個人向けにはアマゾンでも売っていますよ。開業医や学生が買っていますね。
私たちの「医用辞書」なら変換できない医療単語はないし、
長い単語は、「とうにょうびょう*」などと変換したい用語のよみに「*」をつけることで、関連語がずらずら出てくる。
 医用辞書2008年度版を4月から販売します。
Windows2000、XP、Vistaで使えます。

 私の仕事は、医療関係者や患者さんの要望、市場の動向、また吸い上げた営業マンの情報をベースに医用コンテンツを企画することです。
医療業界はコンテンツが未整備の状態ですし、やりたいことが他にもたくさんあって面白いですよ。

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